部族の割拠、氏族の名、母体部族

部族の割拠

 メオーテ系のカムラ人が惑星アムーケルに入植を開始したのは二千八百年代であったとされる。惑星開発計画の基盤となる(地下或いはドーム型の)植民都市を次々に建設し、年に数万人規模の入植者を送り込んだ。
 しかし、アムーケルは原始の惑星であったが、無人の惑星ではなかった。アムーケルの古代名はアモケール、すなわち「アモの果て」という意味を持ち、紛れもなくヴァルム・アモの一部であることを示唆している。惑星の北半球を中心とする地域と衛星ペシ、アプラには、遥か以前にアモとその周辺から来た四十以上の部族が割拠しており、「王なき状態」にあったが、有力な三部族に抑えられ、幾らかの小競り合いは生じたものの、かろうじて均衡状態を保っていた。その三部族の一つがメルハール人の祖先「ラア・ハールの民」すなわちラア・ハーリであり、他はデオニ人とタデルガラー人であった。
 

氏族の名

 「ハール」という名が何を意味するかは諸説あるが、元来は特定の氏族の名であったというのはほぼ一致した定説で、そこから分かれ出た氏族がハールの名を代々受け継いだようである。ハールの前に置かれるのは称号で、例えば「ラア・ハール」は「大地のハール人」、「メル・ハール」は「高貴なハール人」という意味を持つ。ちなみに我が国の首都リアエルウェーは「ラア(大地の)・エルウェ(森)」が変化した名である。

 『三〇〇〇年代に入ると、南半球のカムラ人の人口は一千万に達し、アモの諸民族に脅威を与える程になった。ラア・ハーリを治めていた勇猛な女戦士「エンナリサ」は他の二部族の王と共に、カムラ人の代表と話し合い、北はアモの諸部族、南はカムラ人の領土とし、カムラ人は北に干渉せず、いかなる部族を支援または攻撃することを禁じるという協定を結んだ。しかし、その六十年後、カムラ人は協定を一方的に破棄し、タデルガラー人と密約を交わして武器と船を供与すると、北は激しい戦乱となった。タデルガラー人は周辺部族を次々に征服し、ラア・ハーリの国境まで迫る勢いであった。衛星コパド(現在のペシ)の大部分はデオニ人の領土であったが、タデルガラー人はこの地も奪った。半年後、カムラ人の母国からおびただしい数の船が飛来し、またヴァルム・アモから「選りすぐりの強力な兵士たちを乗せた船」がやって来ると、惑星アモケールは大地、空、軌道、衛星、あらゆる場所が戦場となり、それは星系内すべての惑星とその衛星、小惑星帯、要塞、ステーションにまで広がっていった。カムラ人とタデルガラー人、およびそれに従う部族は強力な軍備と策略をもってラア・ハーリを圧倒したが、ラア・ハーリを治めるシャファラザは二年半、持ちこたえた。シャファラザはエンナリサの娘である』
 

母体部族

 「選りすぐりの強力な兵士たち」とは何者だろうか? 実はこの一文がラア・ハーリとその母体となった部族のつながりを表すと考えられている。いかにシャファラザが優秀な指導者であっても、ラア・ハーリが既存の兵力でカムラ人の攻撃を防ぐのは不可能であろうから、彼女たちの「母国」に支援を要請したと考えられる。ラア・ハーリは単にアムーケルに住む一部族ではなく、ヴァルム・アモに存在する強力な部族から分かれ出た氏族が形成した部族であり、三〇〇〇年代においても、強い絆を保っていたのである。
 その部族を特定するのはとても困難で、民族のルーツを探る最大の鍵となっているのだが、近年の研究でその候補はほぼ二つに絞られたといってよい。
 一つは「バラテ・ハール」。数十隻の軍艦からなる船団で活動し、宇宙船内部で世代を重ね、農業プラントで食糧生産を行うと共に、他部族の拠点や周辺国の貿易船などを攻撃し略奪することで生活資源を補っていた民族。四七〇〇年代にロア・ガル系の国の軍隊によって殲滅され、滅亡した。

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