シンデレラこばとちゃん

こばとのお伽噺② シンデレラこばとちゃん

  昔々、シンデレラ(灰かぶり)こばとちゃんと呼ばれている、そこそこに可愛い妖精の娘さんがおりました。シンデレラこばとちゃんは小さな田舎町で継母のマリちゃん、姉のかばねちゃんと一緒に暮らしておりました。しかし、シンデレラこばとちゃんはいつも不真面目で怒られてばかりいます。
「はあ。掃除なんてやってられませんねー。こばとにこんな田舎の生活は似合いませんよー。大きなお城とかで楽しく愉快に暮らしたいものですねー」
 シンデレラこばとちゃんは今日もまた愚痴ばかり言っています。
「ちょっと、こばと! 真面目に掃除しなさい。お母さんも私も一生懸命働いてるんだから!」
 姉のかばねちゃんが見るに見かねて注意しますが、
「はあ。一刻も早く、こういう生活から抜け出したいですねー」
とぶつぶつ言いながら、ちょー適当にはたきでぱたぱたと埃を払ったりしています。

 ある日のこと、この国の妖精王子様が舞踏会を催すという話を人づてに聞きます。
「絶交の機会ね! かばねちゃんなら美人だし、真面目で頭も良いし、立ち居振る舞いも申し分ないから、きっと妖精王子様に見初められるわ!」
 継母のマリちゃんはいつになくはしゃいでいます。
「こばとも行きたいですよー!」
 シンデレラこばとちゃんは自分も連れて行ってくれと懇願します。
「こばとちゃんはまだ子供だから早いわよ。もう少し待ちなさい」
 マリちゃんは諭します。
「もう少しって、どれくらい?」
 シンデレラこばとちゃんは訊き返します。
「そうねえ ...... あと 2、3百年くらいかしらね」
 かばねちゃんが代わりに答えました。
「きい! そんなに待っていられませんよー!」

 シンデレラこばとちゃんの抗議も空しく、マリちゃんとかばねちゃんは着飾って舞踏会に出かけて行ってしまいました。
「ひどいですよ、ひどいですよー。姉さんなんかより、こばとのほうがずっと可愛いもんだから、それを妬んで連れて行ってくれなかったんですよー。ちょー悔しいですねー。追いかけて行きたいけど、こんな田舎臭い服じゃ笑い者になるだけですよー!」
 シンデレラこばとちゃんは悲しくてしくしく泣き出してしまいました。
 するとそこに、魔法使いの小春ちゃんが現れました。
「こばとちゃん、どうして泣いてるのー?」
 魔法使いの小春ちゃんは間延びした口調で尋ねるので、シンデレラこばとちゃんは泣きながら事情を話します。
「こばとちゃん、ちょーかわいそー! こはるがねー、何とかしてあげるー」
 魔法使いの小春ちゃんはそう言って杖をひと振りすると、シンデレラこばとちゃんは大人っぽく美しい姿となり、服装は豪華な深紅のドレスに替わっていました。そして燦然ときらめくガラスの靴を履いていました。そして目の前には、舞踏会へと案内してくれるかぼちゃの馬車が用意されていました。
「ひゃっほうですよー! これで堂々と舞踏会に乗り込めますよー」
 シンデレラこばとちゃんは嬉しくなって辺りを飛び回ります。
「それからねー、12 時になったら魔法が切れちゃうから注意してねー」
 小春ちゃんがそう忠告すると、
「わかりましたよー。あ、でも、そのダサくてとろそうなかぼちゃの馬車は必要ないですよー。飛んで行ったほうが速いですからねー」
 シンデレラこばとちゃんは、そう言ってぴゅーっとお城まで飛んで行ってしまいました。
「何あれー!? あたまにくるー!」
 後に残された魔法使いの小春ちゃんは怒って杖を振り回します。

 舞踏会に辿り着いたシンデレラこばとちゃんは、その場にいた妖精さんたちの注目の的になりました。妖精王子様もその美しさに魅了され、他の妖精さんたちには目もくれずにシンデレラこばとちゃんとばかり踊っていました。
「最高ですねー! イケメン妖精王子様はこばとに夢中ですよー! 姉さんも羨ましそうにこっちを見てますねー!」
 シンデレラこばとちゃんは時が経つのも忘れて踊っていましたが、ふと気づくと時計の針が 12 時に迫っています。
「た、大変ですよー! もっと踊っていたいけど、これでさよならですよー!」
 妖精王子様は引き留めますが、シンデレラこばとちゃんは慌てて舞踏会場をあとにします。そのときに右足のガラスの靴を落としてしまいました。

 妖精王子様は何とかしてあの美しい妖精さんを探し出そうと考えて、
「ガラスの靴がぴったりと合う女性を妻にする!」
というおふれを出しました。

 やんごとない妖精婦人たちがこぞってガラスの靴を試してみましたけど、足にぴったりと合う妖精さんはいませんでした。そしてかばねちゃんの番が来てガラスの靴を履こうとしたところ、シンデレラこばとちゃんが飛んで来て、かばねちゃんをどんと押しのけて、
「無駄なことはやめてくださいなー! こばとの靴に決まってますよー!」
と言いながら履いて見せました。もちろんぴったりです。
「ね? ぴったりでしょー? 結婚してくださいなー!」
 シンデレラこばとちゃんは得意そうに言いながら王子様に詰め寄ります。
「いや、しかし、この前とは見た目がずいぶんと違うような ...... はっきり言って別人としか思えないのだが ...... 」
 妖精王子様は戸惑いますが、
「あれれー!? 一国の王子様ともあろうお人が約束を破るんですかー!? そんなことしたら国民の信用を失いますよー!?」
 シンデレラこばとちゃんは脅すように言うので、
「ぐぐぐ。仕方ない。約束は約束だ。結婚しよう」
 妖精王子様は観念したように答え、数日後に結婚式を挙げました。

 こうしてシンデレラこばとちゃんは念願の豪勢な暮らしを手に入れましたが、あまりの贅沢三昧を続けたために、妖精王国はたちまち傾いて数年後には財政難で滅亡しました。

「とほほですよー! また元の田舎暮らしに戻ってしまいましたよー!」
 シンデレラこばとちゃんは叫びましたが、
「自業自得!」
 マリちゃんとかばねちゃんは揃ってそう答えました。

<おしまい>
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