変化の波が押し寄せています

 前回、「可能動詞は五段活用する動詞のみから作ることができる」という話をしました。これが従来の文法の枠組における絶対的ルールです。そしてそのルールを根底から変えてしまおうとするのが「ら抜き言葉」なのです。つまり上一段活用や下一段活用はダメということ。いくつか例を見てみましょう。
 

上一段活用から可能動詞?

 たとえば「見る」は次のように上一段活用します。

 [未然形] 見(ない)
 [連用形] 見(ます)
 [終止形] 見る
 [連体形] 見る(とき)
 [仮定形] 見れ(ば)
 [命令形] 見ろ

 上一段活用には準助動詞「られる」をつけて可能を表すことになります。

動詞「見る」 + 準助動詞「られる」 = 見られる

 これが正当な「見る」の可能形です。
 準助動詞「られる」を活用させてみましょう。

 [未然形] 見られ(ない)
 [連用形] 見られ(ます)
 [終止形] 見られる
 [連体形] 見られる(とき)
 [仮定形] 見られれ(ば)

 そして「ら抜き言葉」は「見る」とは別の独立した動詞

見れる

をつくることになります。この動詞は下一段活用します。

 [未然形] 見れ(ない)
 [連用形] 見れ(ます)
 [終止形] 見れる
 [連体形] 見れる(とき)
 [仮定形] 見れれ(ば)

 「ら抜き」するとしないでは、活用形まで含めると5種類にわたって言い方が変わってしまいます。このままでは「ら抜き」肯定派と否定派の溝は深まる一方ですね。まったく由々しき事態です。
 

下一段活用から可能動詞?

 下一段活用の例としても、今話題の「食べる」を使ってみます。

 [未然形] 食べ(ない)
 [連用形] 食べ(ます)
 [終止形] 食べる
 [連体形] 食べる(とき)
 [仮定形] 食べれ(ば)
 [命令形] 食べろ

 下一段活用も可能を表すためには準助動詞「られる」をつけます。

動詞「食べる」 + 準助動詞「られる」 = 食べられる

 準助動詞「られる」を活用させてみると ......

 [未然形] 食べられ(ない)
 [連用形] 食べられ(ます)
 [終止形] 食べられる
 [連体形] 食べられる(とき)
 [仮定形] 食べられれ(ば)

 「ら抜き言葉」は「食べる」とは別の独立した動詞

食べれる

をつくることになります。この動詞は下一段活用します。

 [未然形] 食べれ(ない)
 [連用形] 食べれ(ます)
 [終止形] 食べれる
 [連体形] 食べれる(とき)
 [仮定形] 食べれれ(ば)

 やや音の連なりに難があるかな、と思います。

ta-be-re, ta-be-re-re

というように、e 音が 2 連続、 3 連続します。

 「ら抜き言葉」に不快感を示す人は、無意識のうちにこの音感を嫌っているのかもしれません。こばと姉も「とにかく、あの響きがいやなの」と申しております。その点では、上一段より下一段の可能動詞のほうが 3 連続するぶん、余計に嫌われるかもしれませんね。なので、

上一段活用の可能動詞なら認める。下一段活用は絶対にダメ!

という、どっちつかずの中間派もありかもしれません。昨年、この妥協案を姉に提示してみたところ、「ばか言わないで!」と一蹴されましたけどね。ちょーひどい。

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