ニ号研究

≪ 第10話「宗一郎君の小説」

幸恵ちゃんの思い出 第11話「二号研究」

 東京に帰ってから、姉は(当時)東京都文京区駒込にあった理化学研究所に出入りするようになりました。毎晩帰宅は遅く、口数が少なくなり、良江さんやこばとに対してもよそよそしい態度になっていたのです。でも、こばとには姉のしていることが何となく想像がついていたので、ある晩、布団に横たわってからこんなことを尋ねました。

こばと
 ...... 新兵器を作ってるの?

かばね
 ......

こばと
 どんな兵器なの? それが完成したら米国に勝てる?

かばね
 ......

こばと
 ...... ねえ、どうして黙ってるの?

かばね
 悪いけど、家族にも決して口外できないことだから。

 それが「二号研究」という名称であったことを知ったのは戦後になってからです。「二号研究」は陸軍航空本部直轄の最高軍事機密でした。姉はその研究を少しでも進展させるために協力を申し出たのです。それが苦渋の決断であったことも、こばとは後になって知りました。

こばと
 資料を ...... 向こうの世界の技術を提供したの?

かばね
 あなたはそんなこと気にしなくていいの。もうお休みなさい。

 現在『あとりえこばと』に保管している資料の大部分は、当時帝国図書館(現国会図書館)の地下に第一級極秘資料として保管されていました(それはもちろん姉の人脈を使っての特別なはからいでした)。その中には、当時も、そして現代にも存在するはずのない知識が眠っていたのです。しかし姉はそういうものを世間に晒すことを極度に怖れていたはずです。

田之倉良江(たのくら よしえ)
 かばねさん、最近顔色がよくありませんよ。
 お仕事も大切でしょうけど、身体を壊したら元も子もないですから。

かばね
 ありがとう、良江さん。でも大丈夫よ。

こばと
 せめて食べる物に栄養があればねー。でも新兵器で戦争に勝ったら、お腹いっぱい食べられるようになるのねー。

良江
 新兵器?

かばね
 こばと!!

こばと
 ...... ごめん。口がすべった。

かばね
 そろそろ行かないと。

良江
 最近、出勤時間がずいぶんとお早いのね。
 図書館のお仕事って、そんなに忙しいのかしら。

こばと
 だって、今は別の仕事場に行ってるから。

かばね
 あなたは、もうその口を閉じていなさい!

こばと
 ...... 何も怒鳴らなくてもいいでしょ。

<次回に続きます>

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