思いがけない人物/連絡が取れません

 ちょっとパラレルな英語ノートのボツ原稿その1です。

パラレル① 思いがけない人物

 そして、そこには思いがけない人物が来ていたのです。
「赤桶さん、どうしたんですかー!?」
 こばとは叫んで、赤桶さんの傍へ寄ります。
「退学の手続きとかしなきゃいけないから」
 赤桶さんは目を伏せてそう答えたので、こばとの胸が痛みました。
「でも、それだけじゃないの」
 千明さんが赤桶さんの両肩に手を添えます。
「暦ちゃん、私たちの力になってくれるって」

 ある教授が赤桶さんを見て、
「犯罪の片棒をかついでおいて、よくまあ、のこのこと姿を表せたものだな」
と吐き捨てるように言いました。
 かっとなった千明さんが何かを言い返そうとしますが、赤桶さんは千明さんの袖を軽く掴んで
「いいの。本当のことだから」
と言って耐えます。代わりに、こばとが無礼な教授を睨んでやりました。

 赤桶さんは、声を震わせながら答えます。
 千明さんが彼女を励ますように手を握っていました。
「私、これまで、数馬(かずま)のすることは何でも正しいと思っていました。彼の計画は壮大で、その道筋は理にかなっていて、私は彼が目的を果たすためにどんな手助けができるのだろう。そんなことばかり考えていました。でも、彼が目的のためには手段を選ばないことを知るようになってから、胸の奥で少しずつ違和感が湧いてきたんです。これはちょっと違うんじゃないかって。そして昨日、千明さんからの手紙が届きました。そこには彼女を手ひどく裏切った私のことを本当に気遣ってくれる内容が書かれてありました。その手紙は一瞬で私を悪夢から目が覚ましてくれたのです。でも数馬を愛する気持ちは変わりませんでした。だからこそ、数馬にはもうこんなことはやめてほしいと思って、人としての真直ぐな道を歩んでほしくて ...... もし彼が K 大から手を引かないなら、2度と帰らない、そう書置きして大学に来たんです」

「目面上が君を切り捨てる可能性はないのかね?」
 数学科の降籏(ふりはた)という教授がとんでもないことを言いました。
「数馬は寂しい人です。彼はほとんど誰にも心を開きません。これまで彼の人生は友情にも愛情にも無縁でした。でも彼は私のことだけは愛してくれています。それだけはわかるんです」
 赤桶さんはしっかりと顔を上げてそう答えました。
 このときの赤桶さんの表情には確固たる自信が溢れていました。
 

パラレル② 五十木が現れた!

 ところが、そこで思わぬ事態が発生したのです。
「んん? 誰かがやってきて暦さんの部屋のインターホンを押しましたよ。宅配とかではなさそうですね ...... あ、あれは、もしかして、五十木ー!?」
 痩せ細って別人のようになっていましたけど、五十木に間違いありませんでした。五十木は何度もインターホンを押し続けますが、赤桶さんは居留守でも使っているのか、なかなか出てきません。
 

パラレル③ 連絡が取れません

 暦ちゃんと連絡が取れません!
 今日は昼を過ぎても研究室に姿を見せないので、院生さんの1人が心配して電話してみても全く応答がないそうです。
 しかも昨日、最後に彼女が目撃されたのは厳戒態勢が敷かれた阿縣研の前なんです。
 

パラレル④ 六郷教授

 「理学部の六郷(ろくごう)教授が阿縣研の騒ぎを見咎めて、雛田谷(ひなたや)学長に抗議したようです。六郷教授は警察に被害届を出すべきだと主張しているようです。
 

パラレル⑤ 暦ちゃんが帰っていない?

 お昼休みを過ぎても暦ちゃんが帰っていないということです。小角教授も、近頃は暦ちゃんが勝手に外出してなかなか帰ってこないことが多くなって、不審に思っていたそうです。
 とはいえ、赤桶さんを追跡するのは、こばと以外に不可能ですから、もし今日彼女がアジトに行くようなことがあったら、こばとは全て振り切って飛んで行かなくてはならないのです。

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