鬼ごっこ

≪ 第7話「善知鳥宗一郎」

幸恵ちゃんの思い出 第8話「鬼ごっこ」

 宗一郎君の内に眠るただならぬ才能に目を止めた姉は、翌日になって予定を変更することを告げました。

かばね
 幸恵ちゃん、2日間だけ滞在を延長したいの。
 かまわないかしら?

幸恵
 あ、はい。私もせめてあと少しだけ三郎のそばに居てやりたいので。
 次はまたいつ会えるかわからないし。

かばね
 勝手を言ってごめんなさいね。

こばと
 こばとはあと1週間ぐらい居てもいいかもしれないなー。

かばね
 こばと、あなたは御飯をたくさん食べすぎるから、善知鳥さんに迷惑かもしれないわね。今日、1羽で東京に帰ってくれないかしら。

こばと
 ...... 無茶苦茶言わないでくださいな。

かばね
 冗談よ。

幸恵
 ...... かばねさんでも冗談を言うんですね。
 ...... いつも真顔で話すから良くわからないけど。

こばと
 ...... こばとも千年付き合ってるけど、姉さんの冗談はよくわかりませんよ。

 宗一郎君が学校から帰ってくると、姉はこのちょっと気難しい性格の少年と色々なお話をしながら打ち解けようとしていました。

かばね
 ディケンズを読んでいるの?

宗一郎
 『二都物語』と『オリバーツイスト』は読み終わった。次は『デビッド・カッパーフィールド』ていうのを読んでみたいけど、手に入らん。

かばね
 こばとが原書を持っているから、あとで送ってあげましょうか?

 ...... こばとに断りもなく勝手な約束をしないでほしかったですけど(当時、外国の書物はとても貴重でした)、まあとにかく、今は話の続きをどうぞ。

かばね
 さすがにまだ英語で長編小説を読むのは難しいかしら?

宗一郎
 なんとか頑張って読んでみる。

かばね
 本当なら、こばとにあなたのことを頼みたいのだけど、あの子は最近食べ物のことばかりに関心がいっているし、宗一郎君におかしな軍国主義を植えつけられても困るから、やめておいたほうがよさそうね。

宗一郎
 あの食ってばかりのおかしな妖精も、そんなに賢いのか?

かばね
 ええ、私なんかよりずっとね。
 9姉妹の中でも特別な才能を与えられた子よ。
 あのとおり、性格は破天荒で移り気なんだけど。

宗一郎
 9姉妹って、まだ他にもそんなに妖精がうじゃうじゃいるのか!?

かばね
 そのことについては、これから少しずつお話しましょう。
 きっと長い長い付き合いになると思うから。時間はたくさんあるわ ......

三郎
 信男、そっちへ追い込めー!

信男
 うん! 待て待てー!

こばと
 あはは。そう簡単に捕まりませんよー!

かばね
 こばと、家の中を走り回らないの!
 鬼ごっこなら外でやってちょうだい!

こばと
 走り回ってない。こばとは飛び回ってるの。

かばね
 屁理屈言わないの!

こばと
 このお家は広くて楽しいですねー。
 宗一郎も一緒に遊びましょー。
 
宗一郎
 ...... いや、俺はいい。

かばね
 こばと、宗一郎君は身体が弱いから、走り回ったりするのは好きではないのよ。

こばと
 でもねー、無理のない程度に運動はしたほうがいいですよー。
 子供は本ばかり読んでちゃダメねー。めいっぱい遊ばないとねー。
 今ねー、信男君と三郎君が2人がかりでこばとを捕まえようとしてるんだけど、2人ともまだ小さいから全然ダメねー。このままでは永久に捕まえられませんよ。ここはお兄さんがお手本を見せてくださいな。

宗一郎
 仕方ないな。おい、三郎、信男。
 相手は零戦なみに素早く飛ぶんだから、むやみに追い回してもだめだ。
 ちゃんと作戦を立てんとな。

三郎、信男
 うん! 兄ちゃん、参謀みたいだ。かっこいいー!

かばね
 ...... 仕方ないわね、まったく。
 でも確かにこばとは昔から子供を遊ばせるのが上手ねえ。
 そういえば、江戸時代の寺子屋でも、勉強を教え終わったあとに、ああやって子供たちと遊びまわっていたわね。なんだか懐かしい。

 ≫ 第9話「ガキ大将の涙」

スポンサードリンク
末尾大型広告
末尾大型広告

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)