ラフティング!

鬼怒川温泉珍道中③ ラフティング!

まずしっかり準備です!

 日光国立公園の鬼怒川温泉渓谷にやって来ましたよ!

こばと
 これが世に名高い鬼怒川の渓流ですねー!
 ざっぶん、ざっぶんと流れてますねー!
 こんな大きな川を下っていくのは愉快でたまらんですねー!

真理子
 こばとちゃん、今日も出だしからハイテンションね。

かばね
 まだボートも浮かべてないのに。

 ラフティングツアーは 6 人一組なので、旅行に来られている角倉さん一家とご一緒しますよ。孝介さんと奥様の鈴夏さん、そして中学 2 年生の渚ちゃんと、小学 6 年生の直也君です。姉とこばとは小さな生き物なので、制限人数の中に入っていません。

角倉鈴夏(かどくら すずか)
 本日はよろしくね。

真理子
 あ、いえ。こちらこそ。

角倉孝介(かどくら こうすけ)
 どちらから?

博和
 あ、東京からです。

孝介
 なーんだ。僕らも東京からですよ。

博和
 最初は「近場の温泉なんて」と妻に文句言われましてね。

孝介
 ははは。うちもですよ。
 でもまあ、何だかんだ言いながらも、今は結構楽しんでるみたいです。

博和
 ははははは。

真理子
 何がそんなにおかしいの?

博和
 いや、別に。

船生智史(ふにゅう さとし)
 それでは皆さん、ライフジャケットは装着しましたか? かばねさんとこばとさんは合うサイズがないので仕方ないですが、今回だけ特別ですよ。次回からはご自分でライフジャケットを用意しておいてください。

かばね&こばと
 はーい。

船生智史
 ええ、それでは、パドルの持ち方と漕ぎ方を説明します。こうやってグリップに親指をかけて握ってください。はい、そうです。それからパドルをこのように頭上に置いて、両肘が 90 度に曲がるくらいの幅で持ちます ......

いよいよ出発です!

 ガイドさんの説明が続きますが、こばとは漕がないので「まだかな、まだかなー」と思いながら川のほうを眺め、出発を待ちわびていました。

船生智史
 最後に1つ。流れの速い所では水に落ちてしまうこともあります。そんな時は無理して泳ごうとしないでください。仰向けになって、足は下流に向けて上げます。そのまま水に浮いた状態になって、流れの遅いところまで移動するようにしてください。
 はい。それではね、今からラフト(いかだ)に乗ります。さきほど説明したように、外側のチューブに座って、足は中のチューブの下に入れて固定させてください。


 うわあ。揺れる。

直也
 チューブに座るんだよね。こんな感じかな。

智史
 ラフティングでは皆さんで息を合わせて漕ぐことが大切です。
 特に流れの速い「瀬」のところでは、「イチ、ニ、イチ、ニ」としっかり声を掛け合って漕いでくださいね。それでは ......

こばと
 出発しますよー!

智史
 それ、僕の台詞ですよ ......

 こばとたちは、きらきらと陽光に輝く水飛沫を浴びながら、いくつもの波を超えながら、爽快に下っていきますよ。流れの遅い「瀞場(とろば)」では、パドルを止めてゆったりとした気分で周囲の景色を見渡せます。緑の生い茂った山々や、川沿いに聳え立つ絶壁はまさに自然の渓谷そのもの ......

智史
 次の「瀬」に入りますよ!
 皆さん、息を合わせて漕いでください!

全員
 イッチ、ニ! イッチ、ニ!

こばと
 ひゃああ。揺れますねー!
 水もばしゃばしゃかかりますねー!
 でも愉快極まりないですねー! 楽しいですねー!
 わ、わわわ! 落ちますよー!

かばね
 こばと!


 大変! こばとちゃんが落ちた!

智史
 ええ!? こばとさーん! 大丈夫ですかー!

こばと
 じゃぶーん。戻って来ましたよー。
 羽根があるから平気ですよー♪ 落ちても愉快ですねー♪


 びっくりしたー。

かばね
 なるべく落ちないようにしてちょうだい。心臓に悪いから。

智史
 真面目な話、何かあると僕の責任問題になっちゃうんで、ライフジャケットない人 ...... 妖精は水に落ちないでください。

こばと
 平気だって言ってるのになー。

智史
 「瀞場(とろば)」です。皆さん休んでください。

不意打ち?

博和
 いやあ。こんなに運動したのは、もう何年ぶりかなあ。
 体がぽかぽかと温まってる。

真理子
 たまには体を動かすのも気分いいでしょ。
 あ、直也君。あんまり、顔を出すと危ないよ。

直也
 ほら、見て見て、おばさん。魚が泳いでる。

真理子
 お、おばさん?

こばと
 不意打ちのダメージをもらいましたね、マリちゃん。

博和
 はははは。

真理子
 何がおかしい!?

博和
 ...... いえ。すみません。おかしくないです。


 あ、鳶(とんび)だ。

鈴夏
 本当。優雅に飛ぶわねえ。

孝介
 渓流の上を渡る鳶か。絵になるなあ。
 カメラがあればシャッターチャンスなんだけど。
 でも濡れるからラフトには持ち込めないし、こう揺れてちゃ撮影は無理か。

博和
 写真撮影が趣味なんですか?

孝介
 ええ。学生の頃から凝っていまして。

真理子
 へえ。そういう趣味があると、家族の思い出をたくさん残せていいですね。

鈴夏
 人物はあんまり撮らないのよ、この人。
 家族ほったらかしで風景写真ばっかり。

真理子
 あらあら。

孝介
 ははは。面目ない。
 でも、ほら、娘たちの入学式とか節目はちゃんと撮ってます。

智史
 お話中、申し訳ないですが、次の「瀬」です!

全員
 わわわ。イッチ、ニ! イッチ、ニ!

マリちゃん、寂しいの?

 こうして約 2 時間に及ぶ渓流下りを満喫しましたよ!
 博和さんが水に落ちて、大きなお腹を上に向けて浮かんでいる姿は、直也君に言わせると「フグ」のようでした。言い得て妙ですねー。子供はずばりと言いますねー。「失礼なこと言わないの!」と渚ちゃんに頭を叩かれていましたけどねー。マリちゃんが大笑いして、鈴夏さんが「もっと心配してあげたら?」という顔で見ていたのも、何だか面白かったですねー! というわけで、あれやこれや、大騒ぎしながらも、ラフティングは無事終わって下流で陸に上がりましたよ。

孝介
 今日はご一緒できて本当に楽しかったです。
 ありがとうございました。

博和
 いえいえ、こちらこそ。

孝介
 あ、せっかくですから、記念に並んで写真を撮りましょう。
 後でメルアド教えてください。写真を添付して送りますので。

博和
 あ、これは、どうも。

孝介
 それじゃあ、皆さん、川を背に並んでください。
 かばねさんと、こばとさんは、真ん中に浮くような感じで。
 はい。笑って。チーズ!

全員
 チーズ!

 楽しいラフティングが終わり、博和さんの運転で旅館へ戻る途中です

真理子
 ねえ、博和。

博和
 何だい?

真理子
 私たちにもさ、直也君ぐらいの年頃の子供がいても、おかしくない年なのよね。

博和
 そうだな。もう少し結婚が早くて、授かっていればなあ。

真理子
 子供は諦めていたつもりだったんだけどね。
 楽しそうな角倉さんたちの姿を見ちゃうと、やっぱりね。

博和
 そうか ......

かばね
 マリちゃん ......

姉さんの大切な話?

 旅館に戻って、温泉に入って汗を流しました。そして美味しい食事をいただいているとき、姉さんが妙なことを言い出しました。

かばね
 こばと、私たちは今夜から向こうの「静(しずか)の間」で寝ましょう。

こばと
 ええ!? 何でー!?
 こばと、マリちゃんたちと一緒がいい!

かばね
 とにかく、そうしてちょうだい。

こばと
 やだ! 皆で一緒に川の字に寝るほうが楽しいもん!

かばね
 我儘言わないで。マリちゃんたちも、その、夫婦水入らずで話したいことも色々あるでしょうし。

こばと
 そうなの? マリちゃん?

真理子
 え? ええ、まあ。どうかしら。

こばと
 ???

かばね
 実は私もこばとに大事な話があるのよ。

こばと
 大事な話? 旅行が終わってからじゃだめなの?

かばね
 だめなの。

こばと
 わかった。じゃあ、そうする。

 食事を終えて、皆で楽しくお喋りしているうちに午後 11 時を迎えました。姉とこばとは短い廊下を挟んだ「静の間」に移って就寝の準備をします。こばとは姉の隣に潜り込みます。

こばと
 で、大事な話って何?

かばね
 ...... ねえ、こばと。やっぱり人間は私たち妖精とは違うのよ。

こばと
 何を今さら ......

かばね
 私たちはこの先何千年も生きることができるわ。大賢母様はそう望んで私たちを創られたのね。でも普通の人間は 100 年も生きられないの。向こうの世界のテクノロジーをもってしても、大賢母様自身でさえも、人が 200 年を超える寿命を得ることは叶わなかった。その代わり人間はね、親から子へ、子から孫へと命をつないでいくの。それは人間や自然の生き物だけが持つ能力であって、私たちに備わっていないものなのよ。テクノロジーは人に長い寿命を与えることができなかったように、私たちのような種族に子孫を残す機能を与えることはできなかった。

こばと
 私たちは不自然な生き物なの?

かばね
 そんなふうに考えないで。
「この世に生まれたものは、存在すべくして存在する。そこに一点の不合理もなく、ただそれは必然である」
 大賢母様のお言葉よ。向こうの世界で、まだ私が雛だったころ、姉さんたちと一緒に何度も復唱したわ。

こばと
 で、結局のところ、姉さんは何が言いたいの?
 そういう話なら今日でなくてもいいと思うんだけどな。

かばね
 だからつまりね ...... 鈍いわねえ、あなたも。
 もういいわ。おやすみなさい。

こばと
 ええ!? それはないよ、姉さん!? 寝たふりしてるしー! 

<明日に続きます>

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