不定冠詞 a, an の印欧祖語
 古英語の時代に使われていた不定冠詞は?

 『英語ノート』の印欧語源コーナーをこちらに移しました。リニューアルされた語源シリーズの初回は、英語の基本中の基本ともいえる不定冠詞を扱います。

a と an はもともと同じ冠詞でした

 英語を学び始めるときには必ず

a book, an apple

というように、2種類の不定冠詞があることを教わります。母音で始まる名詞の前には an, それ以外には a をつけるという規則ですね。

 でもどうしてこんな面倒な規則になっているのでしょう?
 「数えられるものだよ」ということを表すなら記号は1つで充分な気がしますよね。外国語を勉強するこちらの身にもなってほしいものです(自分勝手な言い分)。でも実はこの2つの不定冠詞、もともとは1つだったのです。昔の英国人もやっぱり「そりゃ1つで充分だろ」と思っていたのです。

 古英語の時代に使われていた不定冠詞は an だけです。
 たとえ子音で始まる名詞であっても、an sheep とか an stone のように an を添えていました。ただし発音は現代の an とは少し違っていて「アーンヌ」と言っていたようです(ただしヌはすごく弱い音なので、やっぱりアンと聞こえるかもしれません)。

 しかし 12 世紀頃から子音の前につく n は次第に消えていくようになり、他方で母音で始まる名詞の前の an はそのまま残って、現代ではあたかも2種類の不定冠詞が存在するかのようになってしまったのです。
 

印欧祖語 oino

 と、ここまでの話なら、大学の講義でも教わる内容です。
 ここはマニアックな語源コーナーですから、さらに深い所まで追及していきますよ。
 そもそも an という言葉はどこから生まれてきたのでしょう?
 その起源は遥か数千年前に印欧語族(インド = ヨーロッパ語族)が使っていた oino (oinos, oynos) という言葉まで遡ります。 oino とは「1つ」を意味していました。

 それから少し時代が下って oino はゲルマン語の aina に変化し、そこから古英語の an を経て、現代英語の a, an, one, once, alone, lonely というような単語を生み出しました。英語で「1つの」とか「1人の」というような意味を含む大半の言葉は oino を起源にもちます。

 印欧語族の分派の1つであるローマ人は oino をラテン語 ūnus に変化させ、そこから英語の union(1つであること = 同盟、組合、連合)、unite(1つになる = 結合する)という言葉が派生しています。

 any もまた印欧祖語 oino を起源とします。古英語の時代は aēnig と発音していました。「1、2、3 ... と1つずつ数えて、そのどれもが」というニュアンスで「どれも」という意味になります。

 まだギリシャ文明もローマ文明さえ存在しなかったような遥か遠い古代から、言葉はその根源的な意味を残したまま世代を超えて受け継がれているのです。やっぱり言葉って本当に面白いですねー。わくわくしますねー。これからは、もうちょっと更新ペースを上げて、色々な言葉の起源を探っていくので、楽しみにしていてくださいねー。

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