お腹が空きました

 ≪ 第3話「開戦」

幸恵ちゃんの思い出 第4話「お腹が空きました」

 開戦当初の破竹の勢いも束の間のことでした。1942 年 6 月にミッドウェー海戦で大敗を喫すると、その後の戦局はどんどん悪くなり(もちろん当時はそんなこと報道されませんでしたが)、国民の生活物資も不足するようになります。この年の2月には衣料は切符制に、食料品は配給制となります。

こばと
 また麦ご飯とサツマイモですかー?
 もうすっかり飽きてしまいましたよー!
 真白なお米をぱくぱく食べたいですよー!

かばね
 ない物はないんだから我慢しなさい。普段は「お国のために」とか勇ましいこと叫んでるくせに、ちょっとお腹が空くと不平を言うんだから。

こばと
 やっぱり、こんな戦争なんてするんじゃなかったかもしれないですねー。

かばね
 あなたって、どうしてそういい加減なの!?

こばと
 まあ仕方ないですね。日本が勝つまでの辛抱です。
 『欲しがりません、勝つまでは』の精神で頑張りましょー。
 そろそろ勝ってほしいんですけど、まだですかねー。

田之倉良江(たのくら よしえ)
 さあさあ、いただきましょう。
 食べる物があるだけでも有難く思わなくては。

田之倉信男(たのくら のぶお)
 いただきまーす。

 こばとたちは戦前から田之倉夫妻の家に下宿していました。
 当時はまだ炊飯器もコンビニもない時代ですから、煮炊きひとつするにも人の手を借りなければならなかったのです。旦那さんの誠司さんは招集されて戦地に赴いたので、良江さんはまだ4歳になったばかりの信男君を育てながら家を守っていました。

馬見塚幸恵(まみづか ゆきえ)
 こばとせんせーい!

良江
 あら、幸恵ちゃんだわ。

幸恵
 かばねさん、良江さん、こんばんは。
 うちの庭で取れたカボチャをおすそ分けしようと思って。

こばと
 カボチャもとっくに飽きましたよー。

かばね
 こばと! せっかく生徒さんが貴重な食料を分けてくださっているのに、その言い方はなんですか!

幸恵
 あ、いえ、いいんです。
 実を言うと、私も本当は飽き飽きしちゃってて。
 それと、これはかばねさんに頼まれていた物です。

 幸恵さんは大きな缶を2つ良江さんに渡します。幸恵さんのお父さんは大きな貿易会社を営んでいるので、細々とではありますが、ドイツからの輸入品が手に入ったりもしました。

良江
 あら何かしら ...... まあ、ビスケット!
 こんな高価な物、申し訳ないわ。

こばと
 姉さんは、お金は持ってるんですよ。
 でも今はお金に替える物自体が不足しているから困っているんです。

かばね
 そういうことは言わなくていいの。ビスケットなら日持ちするから、少しでも食料の蓄えになればいいと思って。信男君に少しでも栄養をつけてあげないと。

信男
 やったあ! 食べていい?

かばね
 お食事のあとよ。1日に少しずつにしましょうね。

信男
 うん。

こばと
 わーい、わーい! ビスケットですよー!

かばね
 あなたは騒がなくていいの。
 幸恵ちゃん、どうもありがとう。
 お父様によろしくお伝えしてね。

幸恵
 はい。こばと先生、明日は授業なので、またお邪魔しますね。

こばと
 こばと、こんなに良い生徒をもって幸せですよー。
 またビスケットを持って来てくださいねー。

幸恵
 .........

かばね
 本当に調子がいいんだから。

 ≫ 第5話「姉の誇り」

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