宗一郎君の思い出

 出産予定日は2月17日 ...... のはずだったんだけど、何の音沙汰もないですねえ。
 ちょっとマリちゃんの家に寄ってみようっと。
 

宗一郎君から数えて4代目です

こばと
 ねえねえ、赤ちゃんまだー?

真理子
 まだよ!
 そんな「ご飯まだー?」みたいな言い方しないでよ。

博和
 初産は1週間ぐらい遅れることも珍しくないそうだよ。
 でも、いつでも病院に駆け込む準備はしっかり整えてあるんだ。
 入院に必要な着替えなんかもバッグに全部まとめてあるしね。
 生まれそうになったら、すぐにこばとちゃんにも連絡するよ。

こばと
 待ち遠しいですねー。
 あ、そうだ。ついでにご飯も食べて帰ろうっと。

真理子
 .........

博和
 え? もう21時だよ。まだ食べてなかったのかい?
 僕たちはもうとっくに済ませちゃったよ。
 こばとちゃんたち、相変わらず遅くまで仕事してるんだなあ。

こばと
 そうなのねー。
 やっぱり、マリちゃんいないと業務効率が落ちちゃうのねー。
 あ、そうそうバイトの木下君、いよいよ今月で辞めるってさ。

真理子
 うわあ。さらに人手が減るのか。3月を乗り切れる?

こばと
 わかんない。

真理子
 「わかんない」じゃ困るでしょ!
 まったく他人事みたいに!

博和
 ほら、こばとちゃん。カレーライスだ。

こばと
 ありがとー!
 博和さんのカレーはとっても美味しいのねー!
 いただきまーす! ぱくぱくぱく。

博和
 さっき、かばねさんからも連絡があったよ。

こばと
 姉さんも楽しみで仕方ないのねー。
 宗一郎君から続いて4代目ですからねー。

博和
 生まれてくる子が、じいちゃんに似てる可能性もあるんだよな。

こばと
 ですねー。

博和
 そういえば、じいちゃんの子供の頃ってどんなふうだったんだい?

こばと
 んー。普段は博和さんみたいに大人しい感じだったけどー。

博和
 うん。

こばと
 瞳に激しさありましたねー。
 だから博和さんとはだいぶ印象が違いますねー。

博和
 瞳?

こばと
 なんていうか、心の奥底から燃えるような魂があふれ出るような力強さというか。やっぱり普通の子とはちょっと違っていました。姉さんが初めて会ったとき、宗一郎君は9歳か10歳だったと思うけど、「この子は大物になる」て断言したほどです。

真理子
 やっぱり文豪になるような人は子供の頃から違うのね。

こばと
 でも内面の強さに反比例するように、病弱で体力は全然なかったから、よくいじめられていました。戦時中だったし、腕力の強い子がガキ大将になって周囲を従えるような時代でしたからね。宗一郎君の目つきが生意気に思われたらしくて、しょちゅう殴られたりもしていたみたいですよ。

真理子
 かわいそうに。

こばと
 でも宗一郎君は一度も泣いたことがないんです。
 喧嘩には勝てないけど、傷だらけの顔で口を真一文字に結んで堪えてました。

博和
 その頃から芯の強さ並大抵じゃなかったんだな。

こばと
 でも姉さんが善知鳥家に滞在していたときは大変な騒ぎになったんです。
 姉さんは、いじめた子の家まで乗り込んで行って、
「弱い者いじめするような人間は最低の卑怯者よ!」
みたいに延々と何時間もお説教して、結局最後はいじめっ子が泣いて謝ったという逸話があります。

真理子
 うわあ。かばねさんもすごいわね。

こばと
 姉さんは、勝てないくせに喧嘩して怪我する宗一郎君のことをいつも心配していました。

博和
 僕が子供の頃は、逆にちょっとしたことで泣いてたから、
「男の子が簡単に泣くんじゃないの!」
て、かばねさんにしょっちゅう怒られてた。

こばと
 あの宗一郎君の血を引いているはずなのに、その落差に愕然としたんでしょうね。
 博和さんは末っ子で甘やかされて育ちましたからねー。

博和
 .........

真理子
 ひさ君には宗一郎さんの気質が現れるといいな。

博和
 ...... そ、そんな。

真理子
 冗談よ。情けない顔しないでよ。

博和
 ...... 半分ぐらい本気に聞こえたけどな。

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