する事なす事全部裏目に出る夫くん

 夢が変わる。狭いアパートの一室で一人寂しくテレビを観ていた。
 子供向けの教育番組。
 お姉さんが二人の人形を相手に楽しいお喋りをするという内容だった。
 人形は男の子と女の子。
 男の子は『する事なす事全部裏目に出る夫くん』という名前。
 女の子は『する事なす事全部裏目に出る子ちゃん』という名前。
 番組が始まると、男の子が舞台の端からお姉さんの所へ駆け寄って来て報告する。
「あのね、僕、お金を拾ったんだ。それでちゃんと交番に届けたの」
「まあ。偉いわね。お巡りさんに褒められたでしょう?」
 お姉さんが大仰に胸の前で両手を開いて言った。
「うん。お巡りさんには褒められた。でも、家に帰ってその事を報告したら、お父さんに思い切り殴られた」
「まあ、どうして?」
 またしても過剰な動作を交えてお姉さんが尋ねる。
「1千万円拾って、馬鹿正直に交番に届ける奴がいるか! うちの家計が苦しいことぐらい、おまえもわかっているんだろう! だってさ」
「うーん。そうか。1千万円だもんね。百円ならまだしもね」
「うん。言われてみれば、お父さんの言う通りだと、僕も後悔してるんだ。またしても、裏目に出ちゃったよ」
「仕方ないよ。だって君は『する事なす事全部裏目に出る夫くん』だもん」
 お姉さんと人形はカメラ目線になって視聴者に向けて首を傾げて見せた。
 そこへ女の子の人形が現れる。
「ねえねえ聞いて。私ね、たまには家のお手伝いをしなくちゃと思って、夕飯を作ることにしたの」
「まあ。偉いわね。お母さんに褒められたでしょう?」
「うん。お母さんはにこにこしてた。でもね、天麩羅を揚げてたら火が油に燃え移っちゃって、それからあっという間に家が火事になっちゃったの。家事をしてたら火事になっちゃった」
「最後の駄洒落はちょっといらなかったかな。それにしても災難だったわね。料理を習いたてで天麩羅はどうかと思うな」
「うん。後悔してる。お味噌汁にしておけば良かった。また裏目にでちゃった」
「仕方ないよ。だってあなたは、『する事なす事全部裏目に出る子ちゃん』なんですもの」
 私はぼんやりと番組を見ながら、そろそろ大学の講義に出席しないと単位が危ないと考えていた。

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