竜宮城のこばとちゃん

こばとのお伽噺③ 竜宮城のこばとちゃん

 とある海辺に、こばとちゃんという小さな妖精さんが住んでいました。
 こばとちゃんが何気なく砂浜を飛んでいると、子供たちが亀を囲んでつつき回して遊んでいるのを見かけました。
「ちょーひどいことをしますねー! 助けてあげたいけど、子供とはいえ、こばとより力は強いし、こばと1羽ではどうにもなりませんよ。そうだ。誰か大人を呼んできて叱ってもらいましょー!」
 こばとちゃんは近くに住む知り合いの浦島太郎さんという人を連れてきました。
「そんなことをしてはいかーん!」
 浦島太郎さんが叱ると、子供たちは一目散に逃げて行きました。
「どうもありがとうございます。お礼に竜宮城へご案内しましょう」
 亀は太郎さんにそう言いました。
「ちょっと待ってくださいなー! こばとが太郎さんを連れて来たんですよ? 本当の恩人はこばとですよ? というわけで、こばとを竜宮城へ連れて行ってくださいなー」
 こばとちゃんが恩着せがましくねだるので、亀は渋々こばとちゃんを背中に乗せて、海の底にある竜宮城へ案内することにしました。

 竜宮城に辿り着くと、とても美しいお姫様が出迎えてくれました。
「亀さん、その娘さんはどなた?」
 姫様が尋ねると、
「えーとですね、まあ、一応、私をいじめっ子たちから助けてくれたこばとさん ...... 」
 亀は言いよどみながらも経緯を伝えます。
「もっとはっきり恩人だって言ってくださいなー!」
 こばとちゃんはじれったくなって言いました。
「 ...... そうですか。まあ、何はともあれうちの亀さんを助けてくださってありがとうございます。私は竜宮城の主であるかばね姫と申します。すぐに宴の席を設けますのでどうぞこちらへ」
 かばね姫は釈然としないながらも、こばとちゃんを豪華な料理とお酒でもてなします。
「ちょー美味しいですねー。ぱくぱくぱく。お酒も最高ですねー。ぐびぐびぐび。愉快ですねー! たまらんですねー! どんどん持ってこーいですよー!」
 こばとちゃんは羽目を外して飲めや歌えの大騒ぎです。
 その様子を見ていたかばね姫は亀にそっと耳打ちします。
「何だか品のないお客様ねえ。できるだけ早くお引き取り願いたいわ」

 しかし、こばとちゃんは竜宮城の生活がいたく気に入り、3日経っても4日経っても、一向に帰る気配を見せません。連日連夜のうかれ騒ぎに、かばね姫はうんざりしてきました。
「あの、こばとさん。ご家族が心配されるといけないですから、そろそろ」
 かばね姫は遠まわしな言い方でこばとちゃんを帰らせようとしますが、
「こばとは海辺の家に独り暮らしですから気にしないでくださいなー! そうだ、こばと、ここの子になっちゃおうかなー♪」
と、あまりに図々しいことを言うので、かばね姫もついに堪忍袋の緒が切れて、
「いい加減にしてちょうだい! 毎晩毎晩宴会されて、どれだけお金がかかると思ってるの!? もう充分に恩は返しました! 過剰なほどにね! どうぞお引き取りを!」
と叫んでしまいました。
「 ...... こばと、手ぶらじゃ帰らないー♪ 何かくれなきゃ帰れないー♪」
 こばとちゃんはおかしな歌でお土産を要求しました。
「はい、どうぞ! 玉手箱! お持ち帰りください!」
 かばね姫は玉手箱を突き出すように渡して、こばとちゃんを竜宮城から追い払いました。

 こばとちゃんが海辺に戻ると、村の様子がすっかり変わっていることに気づきました。
 しかも村人たちは誰もこばとちゃんのことを知らない様子です。
「えーん。知り合いが居なくなってるのは寂しいですねー。といっても海辺に引越して来てから1月ほどしか経ってなかったから、それほど親しくなっていたわけじゃないけどー。そんなことより、お土産の玉手箱ですねー。さっそく開けて ...... いや、何だか怪しいですよー。あの高慢ちきな姫様はずいぶんと怒っていましたからねー。そうそう良い物を手渡すとは思えませんねー。罠の可能性が大きいますよー。でもやっぱり小判が入っているかもしれないと思うと、このまま捨ててしまうのも惜しいですよねー!」
 疑り深くて強欲なこばとちゃんは、玉手箱を前に頭を抱えて葛藤します。
 そしてちょうどそこへ通りかかった若者に声をかけます。
「ちょいと、そこのお兄さん。この箱を開けてみてくださいなー」
 こばとちゃんはそう頼んでおいてから、玉手箱から少し離れた所で見守ります。
 若者が玉手箱を開けると、もくもくと白い煙が吹き出してきて、たちまちのうちに若者を白髪の老人に変えてしまったのです。
「やっぱり罠でしたねー! おのれー、ですよー! せめてあと1週間は粘って滞在すればよかったですねー!」
 こばとちゃんは哀れな老人をその場に残して、怒りながら海辺を去って行きました。

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