第五惑星の陽動により、アモの最も強力な部族が打ち破られる

 [SF設定] ハールのヴァルム・アモ侵入②

最も強力な部族

 ナバシは人ではなくヤークルであったという説もあるが、それを窺わせるような記述が年代記に載せられている。
「大王の身の丈は三・八エルク(約二五〇㎝)にも達し、眠ることも食べることも必要としなかった。その肉体は鋼のように強靭であり、手を閉じるだけで簡単に頭蓋骨を砕くことができた。彼の治世は四百年に達した。大王は異邦人を裁くため、立ち上がったのである」

 内乱の痛手から立ち直る暇もないまま、アモで最も強力な部族と相対することになったササリに救いの手を差し伸べたのは(1)シスタリと名乗る民だった。シスタリの王コナセトはマザニの拠点エン・ダシュトを背後から攻撃することを自ら申し出る。シスタリはウリカに拠点を持つ民族で、言語学的・文化的特徴から、タニシェト人から派生した民族であると判明している。身体的特徴を見ると、タニシェトで最も古いオルベル人種の血を受け継いでいるようだ。
 

第五惑星の軌道防衛線

 ダロ・ベサゴにおける主戦場は第五惑星ベサゴⅤ(ウルト)であった。岩と氷ばかりが表面を覆う、一見何の変哲もないこの標準質量の惑星は、ササリ人が長い歳月をかけて完全に要塞化していた。ナバシが軌道防衛線を破るべく、包囲攻撃を開始するのとほぼ時を同じくして、エン・ダシュトに二百隻の軍船からなる船団が現れた。船団は三つに別れて二、五、六惑星へ進軍する。この知らせを受けたナバシの様子を年代記は次のように記録している。
「敵襲二二七、ダシュト二・五・六、の報を受けたナバシはしかし、軍を返そうとはしなかった。ダシュトを攻略するには十分な数とはいえず、取るに足らぬとばかりに打ち捨てた。事実、シスタリの船は(軌道の)浅い所を散発的に攻撃するだけで、陽動の域を出なかった。何よりも、莫大な資源を蓄えた(星)系を前にして、王の目はウルトを見据えるのみであった」
 エン・ダシュトの戦況は最外軌道第七惑星カグリウの守備隊長クスの裏切りによって大きく変化する。クスはかつてナバシに打ち破られたギベトン族の首領であり、軌道防衛の腕を買われて守備隊長に抜擢された。しかし、シスタリの示した裏切りの報酬と、同胞を虐殺された怨念が彼の野心に火をつけた。クスの裏切りは、エン・ダシュト全域における諸部族の反乱を誘発する。
「ゴイ、ナーマ、タン、ドヴェジ、ムムロの民は次々とマザニに対して反旗を翻した。シスタリの王がマザニ討伐後、彼らに土地を再分配することを確約したからである」
 

最も強力な部族を打ち破る

 ナバシが多大な犠牲を払ってベサゴⅤを陥落させたその四日後、エン・ダシュトはシスタリに完全に制圧された。ナバシは部分的勝利で得た戦利品を持ち、ササリ軍の追撃を振り切ってパンドへ撤退する。エン・ダシュトの敗残兵もパンドへ逃げこんだ。しかし、反乱の炎はパンドにも飛び火しており、王の帰還は剣によって迎えられた。王はかろうじて辺境のサラットへ撤退した。追撃の手はサラットへも及ぼうとしたが、王がベサゴⅤで得たササリ人をすべて解放することに合意したため、停戦協定が結ばれ、戦争は終結した。

 マザニに多額の貢納金を納めていた諸部族はシスタリの支配を歓迎した。コナセトは解放された諸部族が争うことのないように、土地を分配し、巧みに支配したため、ウリカを発し、エスハゴ、エン・ダシュト、パンド、ダロ・ベサゴ、スナロベという長大で安定した交易路を確保した。これがグブナ・バリコ(小麦の道)と呼ばれる貿易路が誕生した過程である。実際には様々な商品が流通したのだが、ウリカには膨大な数の小麦農場があり、小麦の流通が周辺地域の安定をもたらしたことから、こう呼ばれるようになった。
「恒星ウリカの周囲をダナルコ様式の建造物が大きな輪となって取り巻いている。そこでは葡萄、小麦、米が生産されていた。ウリカはアモの穀倉地帯であった」
 こうした記述から、シスタリは確固たる生産基盤を持つ集団であり、同時に穀物を流通させる隊商集団だった。シスタリはまた、エン・ダシュトやパンドにおいても農業プラントを建設し、戦士たちに農地を与えた。外敵の侵入を受けた場合、彼らは直ちに招集され、勇猛な戦士として立ち向かうことができた。

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